私は、誰?

「自分の思う通りに言う前に、一呼吸置いて、相手を喜ばせたり、傷つけなかったりする言い回しを考えなさい」

確かに良好な人間関係を築くには重要なことだ。

だが。

小学校に上がる前の子供に言い聞かせ、徹底させるべきことではないのではないか。

 

そう言われ続けてきた"子供"は、今。

誰とでも波風の立たない関係を維持できるようになった。

同時に、他者に対して好きも嫌いも抱けなくなった。

生き延びるにはとても便利で、でも自分の人格にはとても不利なこと。

 

両親は、中学生の私に対して言った。

「そんな大人ぶった言い方する子供なんてかわいくない」

貴方達が私をこうした原因なのに。

その日から私は、両親からの質問には何を言われても、解答がわかっていても、『わからない、どうして?』と返すようになった。

そう聞き返せば、あの人たちは喜ぶ。

 

この人はこう言えばきっと喜ぶな。

この人はこう言われたがっているな。

 

そんなことを常に考えて。

無意識の内に考えて。会話している。

 

「何が好きなの?」

この人は○○が好き、なら私は。◇◇は○○に似ている。

『◇◇が好き。』

「これ、あげるね」

それ、もう持ってるし、それに苦手なんだよなぁ…。

『ありがとう!持ってないから欲しかったんだよね、大事にする!!』

「自分の好きなテーマでプレゼンを作ってください」

せんせい、わたしはじぶんのすきなことがわからないので、あなたのすきなことについてなにかおしえてください。あぁ、貴方の専門は△△でしたね。

『△△の分野の、××について発表します』

 

もう、"自分"が何を考えているのかわからなくなって随分経つ。

私の人生は"相手に望まれる自分"に支配されてからの方が長い。